ねむりラボ通信

人は“夢を見る”ために眠る? 夢の意外な役割とは?

2012年8月20日

先日、ねむりラボが参加した京都大学「睡眠文化論」のなかで、高田公理先生は「眠るときに見る夢には積極的な役割がある」とお話しされていました。夢には、人間の創造力を活性化し、危機対応のシミュレーション能力を鍛える側面もあるというのです。とても興味深い内容ですので「夢の役割」について詳しいレポートをお届けします!

夢を見ているときは身体が動かないワケ

追いかけられる夢、誰かと取っ組み合いをする夢。アクション映画ばりの夢を見て朝起きると気分がぐったり疲れていたという経験は、少なからぬ人が味わっていると思います。でも、夢の中でどんなに激しく動き回っていても、現実の身体は“同じように”は運動しません。どうしてなのでしょうか?

睡眠中は、「身体は眠っているのに脳は活動している(急速眼球運動を伴う)」レム睡眠と、「身体も脳も眠っている(急速眼球運動を伴わない)」ノンレム睡眠が交互に現れます。そして、夢を見るのはレム睡眠のときであることが多いと言われています。

フランスの睡眠研究をリードしてきた脳生理学者ミッシェル・ジュヴェはネコを観察。ネコは、ノンレム睡眠中には身体を立ててまるくなって眠るのに対し、レム睡眠中には身体を弛緩させて横になって眠ることに気づきました。つまりレム睡眠中の動物の身体は、脳から身体への指示が行われないために「夢を見ている動物の身体は動かない」ことを発見します。

sleep cat

ジュヴェは、ネコに脳から身体への指示を遮断するスイッチを壊す手術を施して実験。すると、眠っているネコが、獲物を狙ったり争ったりするような激しい身体の動きを見せるようになったのです。「夢を見て身体が暴れ出したら、眠っている間に怪我をしたり、モノを壊したりしてしまうので非常に危険です。逆に言えば、夢を見ても身体が動かないからこそ、自由にクリエイティブな夢を見ることができるというわけです」。

夢で「危機に対するシミュレーション」をしている?

さらに、「夢は危機対応のシミュレーション能力がある」と高田先生。夢は体験や記憶を反芻し、内容のシャッフルを伴うもの。これによって、さまざまな出来事への対処方法をシミュレーションしているのではないかという説があるのだそうです。

たとえば、夢のなかでは、死んだはずのお祖父さんと元気に生きているお母さんが会話する場面を見ることもできます。つまり、「夢のなかで実際に起きる可能性のあるシチュエーションを設定し、自らの行動をシミュレーションしているのではないか」と考えられるというわけです。

現実ではありえない、恐ろしい場面やシチュエーションを夢に見てしまうのも「危機対応のため」だと思えばちょっとあきらめがつくかも? でも、どちらかというとありえないほどハッピーな夢を見て「幸せ対応のシミュレーション」をしたいものですね!

スペイン語では夢=睡眠

みなさんは「夢」という言葉をどんなふうに使っていますか?「将来実現したい願い」という意味で用いることが多いのではないでしょうか。「アメリカンドリーム」という言葉は戦前にも、日本で意識されていましたが、それが「文化としての日本語」に登録されるようになったのは、1980年代なのです。

「スペイン語では、“睡眠”も“夢”も同じ“sueño”(スウェーニョ)という言葉です。スペイン人は、眠ることは夢見ることだと考えていたのかもしれません。眠って夢を見ることには、積極的な意味合いがあるのに、“願い”の意味ばかりが強調されるのはちょっとさびしいですね」と高田先生は言います。

もしかすると、人間は夢のなかで自由に世界を創造したり、危機対応のシミュレーションを行えるからこそ、現実社会の「夢をかなえる」こともできるのかもしれません。ときには、ゆっくりとベッドのなかで夢見て眠る夜を過ごしてみてはいかがでしょうか?

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